自分は弱い人間です
独り善がりの勇気
どうして 自分にだけ呪いがかからなかったのか解りません
ただ、自分が意識を取り戻した時には、もう城の中は滅茶苦茶でした
誰かいないかと必死で城の中を走りました
城中の茨を掻き分けながら、声が枯れるまで叫びました
仲間の兵士も 先輩も 学者たちも 女官達も
みんな死んでいるかのようでした
綺麗な廊下 庭園 王の間
全てボロボロでした
そして 最後に王と姫の姿を見つけて
魔物と馬に変えられた姿を見て
自分の世界は全て崩れてしまいました
あのとき 逃げてしまえばよかったのかもしれません
どこの場所でも魔物に悩まされている時代です
別の国へ仕官しなおすなり聖堂騎士団に入団するなり傭兵になるなりすればよかったのかもしれません
姫と王を見捨てていけなかっただけではありません
何処かの町で、ひっそり三人で生きて行く選択だってできたはずです
当ての無い旅路を彷徨うより 王と姫の為にはよかったかもしれない
トロデーンは自分が生まれた国ではありません
でも
自分がトロデーン以外で生きてゆくことを考えることはできませんでした
風が吹き渡る美しい城の風景と
優しい人々と、王と、
そして大切な姫のいる風景がなくなることは嫌でした
だから、自分はドルマゲスを探すことを決意しました
呪いが解けるかは解りません
それよりもまず、この広い世界で奴を見つけられるかどうかさえ解りません
「大丈夫です きっと全て元のようになります」なんて言えなかった
王は勇み足でしたが、自分の心は真っ暗でした
今でこそ、自分達の旅は世界を救うことに繋がっているかもしれない
でも
自分にとって、旅の目的は世界でも平和でもないのです
唯一つ
トロデーンの為
王のため 姫の為
結局自分の為なのです
この気持ちになんと呼び名をつければいいのでしょう
ねえ 神鳥
それでも世界は それを勇気と呼ぶのでしょうか?
END
ドラクエの主人公がしゃべらないのをいいことに思いっきり暗くやってみました