光の窓辺
「ふぁあ・・・」
手元の本に区切りをつけて、ひとつ大きく欠伸をする。
肺いっぱいに吸い込んだ空気は僅かに花の香りがした。
硬直した手足を思い切りソファの上でのばしながら、ちらり、と外に目をやる。
ここ数日、ずっといい天気が続き外はずっと暖かい。
屋敷の庭の春の花々は今が盛りと咲き誇っている。
と、そこで今まで庭の花に別段興味を持つことなんて無かったことに気付く。
庭に自分の意思を反映させたのは世界再生が終わり、もう一度旅にでる前だ。
次に帰る時、少しでもここが彼の育った緑豊かなになればいいと願って。
「?・・・そういえば」
やけに静かだ。
いつもなら威勢良く剣術の稽古をしたり、セバスチャンの手伝いで走り回っているはずなのに。
出かけた様子もなかった。
ということは、屋敷の中にいるはずなのだが。
「どーこいっちゃったのよ」
仮にも世界を救った英雄なので心配など無用なのだが、
自分はそれでも大いに心配だ。
どこかで倒れてるんじゃないかとか、また一人突っ走っているんじゃないか、とか。
(愛想付かしてこっそり出て行っちゃた、とか。)
日光で温まったソファから立ち上がり彼を探す。
といっても勝手知ったる屋敷の中。
玄関、応接室、台所、客間と回り、結局探し人は自分の寝室を堂々と占拠している所を発見された。
柔らかい午後の陽射し注ぐ窓の側。
薄い毛布一枚だけでロイドは眠っていた。
その光景を見たとき、思わず口元が緩んだ
すぐ近くにベットがあるというのにあえて床で眠ろうとした所が可笑しい。
今日は大分暖かいとはいえ風邪でもひいたらどうするつもりなのだろう。
「まぁハニーらしいっちゃらしいけど」
ベットにあったもう一枚の毛布をかけながら、笑う。
起きる気配は無い。よく眠っている。
鼻でもつまんでやろうと思っていたが、あまりに無防備で悪戯をする気は失せてしまう。
そして、こみ上げる胸の痛み。
どんな夢をみているだろうか。
そこに自分はいるだろうか。
早く起きて欲しい。キスがしたい。
でもこのまま眠っていて欲しい。
この想いを『愛しさ』と知ったのはロイドと出会ってからだ。
「ねぇ隣で寝てもいい?」
もどかしさに耐えかねて尋ねた。
当然答えは無いのだが、それをいいことにそっと隣にもぐりこむ。
相変わらず起きる気配は無い。
そっと肩を抱きしめれば、ロイドはこちら側に寝返りをうった。
近づいた頬に軽く口付けて、腕に力を込める。
「起きたらちょっとはびっくりしてよ?」
そっと囁いて、目を閉じた。
END
ED後、エクスフィア回収が終わったらメルトキオで一緒に暮らせばいい。
ゼロス君は今までの分まで幸せになればいい。
これこそハッピーエンドの醍醐味ですね。